admin のすべての投稿

Masatti? Who?

logo

文学でも音楽でも、もっとも古い発表の形態は詩を、物語を吟じることだった。声帯を鳴らし、空気を震わせ、人々と感動や興奮、喜怒哀楽を共有した。吟遊詩人は旅をしながら、人々が集まるところで波乱万丈の物語を語り、聴衆はその物語から、神の残酷さや英雄の脆さ、王の愚かさや賢人の知恵を学び、友人の消息を知り、離れた故郷を懐かしんだ。

やがて、詩や物語は書物になり、その書物は複製され、より多くの人の目に触れ、人々を無知や迷妄から解き放った。今日、膨大な数の書物が世界に流通し、その種類と総数は増えているが、それらはことごとく忘れ去られてゆく。今、目の前にあっても、来年、いや来月にはもう読むことができなくなっているかもしれない。

私はこれまでに五十冊以上の書物を出版してきたが、それらの半分以上は市場の都合でもう手に入らなくなってしまった。「本は不滅だ」とロシアの巨匠はいったが、そのための努力を怠れば、私が書いたものは地上から抹消されてしまう。

遅まきながら、私は自分が生み出した物語やキャラクター、紆余曲折の末、辿り着いた認識、理論、技法の保存のためのアーカイブを作ることにした。それを「masatti」というレーベルで電子書籍の形にまとめれば、いつでもどこでも私の作品は読者の方々にお届けすることができる。そして、私が死んだ後も、「masatti」は万人を不眠に誘うこの世界を、吟遊詩人のようにあてどなく彷徨うことができる。

島田雅彦

Masatti は島田雅彦とその仲間たちが立ち上げた個人の電子書籍レーベルです。第一弾として、新刊の『往生際の悪い奴』(島田雅彦著 ヤマザキマリ挿絵)をお届けします。今後も過去の名作を随時、電子書籍化してゆきますし、Masatti オリジナルのエッセー集、漫画なども刊行いたします。どうぞ御贔屓よろしくお願いします。

「往生際の悪い奴(Kindle版/Masatti)」が発売されました。

Cover1初老を迎えた弁護士と、20代後半にして失業中の男と、就職を控えた女子大生が、契約を元にしたギブ・アンド・テイクの関係を結び、やがてそれぞれの運命が変わる。母の呪縛に抗い、父の影を探し、愛と友情が生まれ、情欲の炎が燃え上がる。その果てに……この緩やかな三角関係は、ほのぼのとして居心地がいい。あなたはもう第三の女に会いましたか?

電子版では、連載時に掲載されていたヤマザキマリのイラスト全て(紙版未収録)が収録されています。

往生際の悪い奴(日本経済新聞出版社)

「悪いことをすると、心が軽くなる気がするの」「悪い子になっていいよ。私を愛してくれるなら」――男はいくつになっても、女からの愛を諦めきれない。その相手が自分をあの世に誘う女であっても。谷崎、川端の世界につらなる、老いらくの恋の彼方へ。

「悪貨 (講談社文庫版)」が発売されました。

akkakoudan

ある日、ホームレスが大金を拾う。だが、その金は偽札だった!捜査にあたった日笠警部が事件解決のために招喚したのが、偽札捜査のスペシャリスト・フクロウ。
一方、「美人すぎる刑事」エリカは、国際的金融犯罪を取り締まるため、マネー・ロンダリングの拠点となる宝石商・通称「銭洗い弁天」に潜入捜査をすることになった。そこで捜査線上に浮かび上がってきたのが、グローバルな資本主義を超える社会を目指す共同体「彼岸コミューン」で育ち、今や巨額の資金を操る野々宮という男だった。最後に勝利するのは、金か、理想か、正義か、悪か?ハイスピードで展開する「愛とお金の物語」

悪貨 (講談社文庫)

20××年、鑑定のスペシャリストすら欺くほど精巧な偽札の流通で、ハイパーインフレに陥っている日本―。偽札流通を促した疑惑のかかる、天才マネーメイカー・野々宮冬彦は、カネに支配されない世の中を築くべく、途方もない計画に着手する。カネの根本の価値を覆そうとする男の運命の向かう先とは!?

「ニッチを探して」が発売されました。

niche

会社を辞めたい人、すべてを捨てて失踪したい人、居場所を探している人、必読! 大手銀行に勤務する藤原道長は、行内で背任の容疑をかけられ、妻と娘を残し失踪する。サラリーマン生活の離脱初日は優雅に鮨をつまみ高級ホテルへ、翌日からは下町の酒場、公園の炊き出し、路上、そして段ボールハウスへ――。所持金ゼロで生き延びるためのニッチ(適所)はどこにある? 東京をサバイバルする実践的サスペンス。

ニッチを探して

背任の容疑をかけられ、妻と娘を残し失踪した元銀行員の冒険。飢えに耐え、星を見ながら、草の上で眠り、雨に濡れ、虫に刺されながら、死者と対話したり、神に祈ったりし、なまった筋肉に鞭打ち、鈍った勘を研ぎ澄まし、わずかばかりの食料を調達してくる。所持金ゼロでも暮らせるニッチは何処にある?

島田雅彦芥川賞落選作全集下 (河出文庫)

これが輝かしき文学史的事件!芥川賞最多落選者であり現・芥川賞選考委員島田雅彦、前代未聞の初期傑作集。永遠の青二才・悪久間一人を峻烈に描いた代表作「僕は模造人間」をはじめ「ドンナ・アンナ」「未確認尾行物体」を収録。作家生活三十周年記念企画。